大溝 貫之

 今回の提案に際し、どういう企画案を出してもらいたいと考えているのかを皆さんにお話しをしたいと思います。

 活性化とは元気にすることです。もっと元気にする対象は鉄道だけでなく、鉄道が走る沿線にかかわる様々なもの、人や暮らしや産業や自然、広くは鉄道を取り巻く環境も元気にする企画を考えてもらいたいのです。鉄道は切り口の一つにしてください。

  企画案は何人かでチームを組んで協力して作ってくださいね。ワイワイ意見を出し合って作った方が面白そうですね。このワイワイの時に守ってほしいルールが3つあります。

 ①    誰かが考えたアイデアを否定しないこと。(ダメダメ、無理無理と言わない)
 ②    「良いね」と続けて、みんなでどうすれば実現できるか知恵を出し合ってください。
 ③    一つのワイワイの時間の目安は5分間です。忘れないように、カレンダーの裏などの大きな紙に間隔を開けてメモを取りながらやると、どういう流れでアイデアが出てきたのかわかりますのでやってみましょう。キッチンタイマーで時間を計ると良いですね。

 このワイワイの話し合いのことを英語ではBrain Storming(ブレイン ストーミング)と呼びます。これを何回か重ねていきましょう。企画案はたくさんあっても良いのですが、人にわかってもらうことも大切ですので、性質の似たものを小さなグループにまとめると説明が解かりやすくなります。話す順番もみんなで考えてください。

 もちろん、状況によってはZOOMなどのオンラインシステムを利用するようにお願いします。

 交流会が大切にしていることは、参加する皆さんに、思い付きを伝えてもらうことではなく、しっかりと手順を踏んで考えたうえで、想像力を働かせて何かに寄り添う考えをまとめる経験を仲間と持つことです。

 手順を踏んで考えるといっても、なかなか浮かびませんよね。ですから、考える手順の例を挙げてみます。 

 ①調査 ②分析 ③ 連想 ④思考 ⑤仮説 ⑥検証 ⑦修正 ⑧考察 この8つが繰り返していきます。

 コンビニで売っているおにぎりを使って、①調査と②分析を説明してみます。

 おにぎりを見てみると、一番外側には透明のフィルムが巻かれています。その上には、シールが貼ってありますね。

 おにぎりの種類、販売業者、値段、成分表示、賞味期限などが印刷されています。2枚のフィルムの間に海苔が挟まっています。小さな番号が印刷されています。番号順にフィルムを解体すると手を汚さないで、乾燥した海苔を巻いて、おにぎりが食べられるように工夫されています。一辺約45mmの正三角形で、厚み20mmくらいのご飯があり、シールに書かれた具材が真ん中に入っています。シール、フィルム、海苔、ご飯、目に見えるものですね。

 それぞれに作った人がいますね。でも、お米を焚いてご飯にしないとおにぎりにならないように、パリッと乾燥して、おにぎりを包むのにちょうど良い大きさの海苔になるように誰かがしてくれたのですね。

 機械でやっていることもありますね。その大量に生産できるように機械を設計して組み立てて、機械が商品として通用するようにした人達もいたはずです。

 これらすべてのものを運んだ人、人と人の間に入って連絡を取ったり、決め事がうまく行くように交渉した人、安全に作られたか検査をして確認した人、おにぎりをコンビニの棚に並べたり、お客さんが買うときにレジを打ったり、お釣りを渡してくれた人等、たくさんの人がかかわって様々な役割を担っています。

 どれが欠けてもうまく行きません。おにぎり一つに注目しても、様々な仕事をするたくさんの人や機械を含む装置や工場、流通機関、さらには、食べ物が育まれるには、清らかな水、土、海、日光、などがなければなりませんし、それらを利用するには長い間受け継がれた技術を持った人の手を借りなければなりません。

 切り口の鉄道の話に戻りましょう。今の鉄道は、大きく分けて2つあります。架線から電気をもらって走る電車と軽油を燃料として走るディーゼル車ですね。ほかにも石炭を燃やして走るSLもありますね。電車は架線から電気エネルギーを与えてもらい、ディーゼル車やSLは、自分たちが燃料を持参して、少しづつ使いながら走っています。それぞれ特徴がありますね。

 おにぎりと同じように、①調査②分析をしてみましょう。駅に着いたら、切符を発券機で買ったり、ICカードをかざして、改札口を通ってプラットホームに到ります。ここまででも、駅前広場、コンコース、発券機、改札ゲートが人の手にかかって作られていますね。安全に気を配ったり、点検したりする管理部門を担っている人もいなければ機能しませんね。バラスト(線路の下に敷いてある砂利)、線路、架線、架線柱、信号、安全設備、行先表示板、駅名標、距離標示、広告看板、ポスター、消火器などなど、ここでは書ききれないほど多くのものが、それぞれの目的を持って、在るべきところに設置されています。

 鉄道会社の人がいて、運行の仕事に携わっていますが、販売店の人や駅前のバスやタクシーに関わる様々な人が係りのある仕事をしています。

 鳥になったつもりで、鉄道路線を空から眺めてみましょう。町と町をつないでいます。この町とあの町はどうして鉄道で結ばれているのでしょうか? いつから、この鉄道は走っているのでしょうか? どういう目的で計画が立てられたのでしょうか? 今とは違っているかもしれませんね。どういう場所を走っているでしょうか? 川のそばの狭いけれど平らな場所を選んでいるのでしょうか。土手の上を走ったり、谷の底を走ったり、景色の良いところもあります。トンネルや橋はどういうところにあるでしょうか? 鉄道の近くには何がありますか? 学校、工場、図書館、マーケット、公園、住宅、お寺、神社、田んぼ、畑どういう風にあるのでしょうか?

 鉄道会社の収入は乗車券の販売によるものだけでしょうか? 他にどのようなお金が入ってくるのか調べてみましょう。逆に支出はどうでしょうか? どういうところを見ると分かるか大人の人に相談しても良いですがまずは自分たちで調べてみましょう。収入、支出ともいろいろなものがありますよ。

 乗車券販売以外に収入を増やすにはどういうことをすればよいでしょうか?

乗客の皆さんもいろいろな目的で利用しています。毎日決まった列車を利用する人も、観光や仕事でたまに利用する人もいます。目的を調べてみると、新しい企画を立てるヒントがあるかもしれませんね。

 この夏からJR北海道を8月中旬から9月中旬の夏限定で運行が始まる『ロイヤルエクスプレス』号についてお話しします。企画案を考える際に考え方を参考にしてください。

 実は『ロイヤルエクスプレス』号は、JR北海道の列車ではありません。所有しているのは東急電鉄です。JR東日本の横浜駅から伊豆急下田駅間を走る豪華列車です。

 夏の間は海水浴客などの利用が多く、通常のダイヤの中に臨時列車である『ロイヤルエクスプレス』号を組み込むことは難しく、仕方なく車庫で休んでいました。

 そのことに気付いた人がいました。北海道は、夏は本州方面からたくさんの観光客が訪れる観光ハイシーズンです。観光列車を走らせれば大きな収入を見込めることは予想していたのですが、準備するにはかなりの資金調達が必要です。財政的に考えてはいるけれどもできないというもどかしい状況にいました。東急電鉄が『ロイヤルエクスプレス』号の運行を休止している夏の間に貸してもらい、JR北海道で観光列車を走らせようと考えました。

 でも、この計画は解決しなければならないことがいくつもありました。気が付いた人もいるかもしれませんが東急電鉄もJR東日本の横浜~伊東も伊豆急の伊東~下田も電化区間ですね。JR北海道では架線のないディーゼル機関車でないと走れない非電化区間も含まれています。そこで、ディーゼル機関車で引っ張ることにしました。

 まだ問題がありました。車内の電気がこのままでは使えないのです。そこで、東急電鉄が持っていてほとんど使われていなかった電源車も借りることにしました。

 まだ、問題がありました。北海道で走る区間で停車する予定の駅のプラットホームの長さが短くて『ロイヤルエクスプレス』号のフル編成でははみ出してしまう駅もありました。解決策として、間の車両を少なくして、全5両の短い編成の列車で観光列車を走らせることにしました。

 解決しなければならないことがたくさんありましたが、知恵を絞り工夫して、夏の間に『ロイヤルエクスプレス』が北海道の大地で活躍する機会が実現しました。

 企画を「無理無理、そんなこと出来るわけない。」と否定してしまっていたら実現できなかったですね。JR北海道は豪華列車を制作に必要な資金が節約できました。一方、東急電鉄も夏の間、車庫に眠らせておくよりはJR北海道に貸し出して使用料をもらったほうが収入が増えます。さらには、夏の北海道を素晴らしい列車で旅することができる人がこの企画が実現したことで生まれました。旅人がいると、食事や休むところ、催し物や泊まるところを提供するなど、沿線の人たちの活動の刺激にもなりますね。社会が活性化する機会に恵まれた解かりやすい実例ですね。

 参加する皆さんは常識にとらわれず、自由な雰囲気を大事にして活性化企画案を作ってください。企画を立てる上での手掛かりを得るには国連が掲げる17項目のSDGs、内閣府の掲げるSociety5.0などのホームページが参考になります。

 冒険が始まります。企画案に正解はありません。手掛かりを求めて探検するなかで、いろいろな困難に遭遇したり、せっかく考えたのに修正しなければならないのはきついことですが、きっと多くの驚きを発見出来ることでしょう。

 大人の方々にお願いです。
 どうか子供たちには自分で苦労させてあげてください。
 親切に大人が資料をまとめたり、用意したりしないでください。
 回り道割り道をさせてあげましょう。

 調べていく過程で様々な気づきに出会うはずです。賞を取りたいがために、大人が企画案を先回りして作り、発表だけ子供たちにさせても、子供たちが得るものは何もありません。疑問解消のお手伝いは最小限にして、寄り添って見守って上げてください。
 お願いいたします。

『ロイヤルエクスプレス』号とは
SDGsとは
Society5.0とは